眼窩(がんか)とは、眼球(めだま)やその付属の構造物が入っている骨の部屋のことを指します。
眼窩には、眼球以外にも、視神経(目で見たものを脳に伝える神経)や、外眼筋(目を動かす筋肉)や、脂肪などが骨の部屋の大きさにぴったり合うように入っています。
この中の組織の量が増えたり減ったりすることで、目が飛び出たりへこんだりします。
眼窩内の組織から腫瘍(できもの)が発生する病気です。 眼窩腫瘍は良性のものから悪性のものまでさまざまですが、中には早期の治療が必要なものもあります。 眼窩は表面から見えない場所であるため気づかれにくく、目が見えづらいなどの症状がでたときには既に病状がだいぶ進行していることも少なくありません。
最も早く気付くきっかけとなるのは、眼球突出(がんきゅうとっしゅつ)という症状のことが多く、目が前のほうに飛び出てくるため顔貌の変化をきたします。初期の段階ではわかりづらいですが、顔を下から見上げるように見ると分かり易いです。
腫瘍の種類によりますが、良性の場合は手術による摘出を行うことが多いです。 悪性の場合は、進行度に応じて治療を決定します。 また、手術で一部の組織を採取し、診断をつけてから別の治療(ステロイド治療、抗がん剤治療、放射線治療)を行う場合もあります。 程度によりますが、全身麻酔で数日~1週間の入院が必要です。
眼窩の骨が折れて中の組織が飛び出してしまう疾患です。
眼窩の中の組織は、骨膜というやわらかい膜につつまれており、風船のような状態で眼窩に収まっています。目に何かが勢いよくぶつかると、衝撃で圧迫された風船が破裂し、中身が飛び出してしまいます。
これにより飛び出した筋肉や脂肪が骨に引っかかったり挟まったりして、目の動きが悪くなり、複視(ものが二重に見える)の症状が出ます。
眼球自体も打撲していることが多いので、視力や眼圧検査、眼底検査などで眼球に異常がないことを確認します。眼球に異常がある場合は骨折に優先して治療が必要な場合があります。
眼球運動機能検査(ヘスチャート、両眼単一視野検査)で目の動きが悪くなっていないか、なっていればどの筋肉が障害されているかを調べます。
CT検査でどの部分の骨が折れているか、どの筋肉が引っかかったり挟まれたりしているかを調べます。
骨折により目の動きが悪くなっている場合は手術が必要です。
また、眼窩内の組織が外に飛び出すことで量が減り、眼球陥凹(がんきゅうかんおう)という目がへこんでしまう症状が強ければ手術が必要になる場合もあります。
外眼筋(目を動かす筋肉)が骨折した部分に挟まっている場合は、強烈な吐き気をもよおすことが多く、放置すれば筋肉が壊死してしまうため、緊急手術が必要になることが多いです。
手術では、骨折した部分に引っかかったり挟まったりしている眼窩内の組織を元に戻します。
必要に応じて、シリコンのプレートや人工の骨を使用して骨折した部分をふさぎます。
程度によりますが、全身麻酔で約1週間弱の入院が必要です。
甲状腺眼症はバセドウ病などの甲状腺疾患に伴ってみられる眼窩組織(眼瞼、涙腺、外眼筋、眼窩脂肪など)の自己免疫性炎症性疾患(自身の体内の抗体が自身を攻撃する疾患)です。
多彩な眼症候(眼や眼の周囲の痛み、流涙、まぶたの腫れ、結膜の充血や浮腫、眼球突出、兎眼(目が閉じられない)、視力低下、視野欠損、眼球運動障害、角膜障害(びらん、潰瘍、混濁、壊死、穿孔)、網膜障害など)を呈し、重症では複視(ものが二重に見える)や視力障害(失明)にまで至ることもあります。
血液検査で、甲状腺の機能に異常がないか、甲状腺眼症に特有の抗体が増えているかを調べます。
MRIで、どの筋肉や脂肪が炎症を起こしているかを調べます。
炎症が強い場合はステロイド投与により炎症を抑えます。
ただし、ステロイドは様々な副作用も出現する強力な薬のため、治療は慎重に行う必要があります。
重症例で失明の危険がある場合は眼窩壁(骨の壁)を打ち抜いて神経の圧迫を解除する手術が必要になる場合もあります。(眼窩減圧術)
炎症がすでに治まってしまっている場合は、ステロイドの効果が期待できないため、点眼やまぶたの手術など症状に応じた治療を行います。(対症療法)