Columnコラム

2023年6月17日

対談

第2回 教育

吉田

今回は、昴会アイセンターの統括である米田先生と、手術指導に来ていただいている大澤先生に、『教育』というテーマでお話を伺いたいと思います。司会進行役を吉田が務めます。よろしくお願いします。
まずは、お二人は現在日本でもトップクラスの硝子体手術医としてご高名ですが、ここに至るまでに、いろいろな経験や出会いなどがあり、それを糧に頑張ってこられたと思います。今振り返って見て、その中ですごく影響の大きかったものなどあれば教えていただけますか?

(左:大澤俊介先生、右:米田 一仁先生)

大澤

あるねぇ(笑)!

米田

また大澤先生とは違うのでしょうけれど、僕が今までで大きな影響を受けた人物を3人挙げろと言われたら、京都府立医大の木下茂先生、愛知医大の瓶井資弘先生、ベトナムでボランティア活動をされている服部匡志先生。木下先生は、眼科医になる道を、眼科医の世界は夢があって楽しいよっていうのを提示してくれたんですよ。瓶井先生は、網膜硝子体で難治な病気を治すことに対する取り組みかというか情熱を教えてもらったし、服部先生は医療自体が根本的に人に対して純粋に喜んでもらえる行為なんやっていう実感を与えてもらえたっていうのが僕の中では一番。テクニカルなことで影響を受けたっていうことはあまりないけど、マインドで影響を受けたのはそれぞれ3人から。

大澤

僕も3人挙げるとするならば、中部眼科の山﨑眞吾先生。僕の研修医時代が終わった頃、山﨑先生は桑名市民病院で手術をしていて、僕がその近くの病院に赴任したときに、近くに硝子体手術のすごく上手な先生がいるっていうことを聞いて、見たくてしょうがなかったんだけど、まだその頃は他の病院に見学に行くことがあまり許されてない時代でね。ただ、自分で門戸を叩いて見に行った時に、あまりに自分の知っている手術と違っていて、「このままでやっていると終わる」と感じて。本当にめちゃくちゃ上手で。それが、僕が硝子体手術をやるようになったきっかけ。でも、硝子体手術ってやり始めたらすごい大変やった。誰も教えてくれないし。どうしたらええのって思いながら、いろんな人に関わっていた中で、Alcon社がやっていたMIVSワークショップに僕が入った時に2人目の、当時阪大におられた大島佑介先生に出会ったんだよ。そのワークショップで触れ合った先生はみんなスパイスが効き過ぎていて、その道にどっぷりハマった(笑)。その中で大島先生に出会った事が僕の中でブレークスルーというか、世界を見るきっかけになった。3人目は三重大学の松井良諭先生。

米田

おお、後輩ですね。

大澤

そう!松井くんは、僕がやった事、生きてきた事、そして思った事、感じた事をちゃんとストレートに後輩に表現したら、その子はこれを楽しいと思ってくれるんだって。自分を追ってきてくれる子がいるから「これでいいんや」って自己肯定できるってすごいと思う。自分の転機の時におった人って、覚えてるよね。敢えて米田くんを出さなかったのは、今もずっと一緒にやってて、節目の人ではないから(笑)。でもその二人が合わさってやっているのはすごい面白いと思う。

米田

経過が全然違っても一緒にできてるのは面白いですよね。ビジョンが近いっていうか。

吉田

将来的にこんな風になりたいって理想の医者っていうのがあって、それに向かっている感じですか?

大澤

おそらく二人とも何を考えているかっていうと、医者というカテゴリーにいることに意味を感じていないと思う。

米田

そうそう。理想の医者像っていうのはあんまりない。みんながハッピーになれるような状況を、今よりもハッピーな状況ってなんやろ、そしてそうするためにはどうしたら良いやろって。

大澤

そう。その時に、僕は医者じゃなくてもいい(笑)

米田

そうそう(笑)。

吉田

医療社会全体を理想のものに仕上げていきたいと。

大澤

そうそう。触れた人達を幸せにしたい。その中で、自己実現していく事でいうと眼科医ってむちゃくちゃ面白い。自己完結できるスキルを持つ事ができるでしょ。これ、他の科ではなかなか無い。麻酔医も自分やし、執刀も自分。そのダイナミックな執刀という現場をすごくコンパクトに作れるのが眼科だからこういう思想になるんだと思う。だから、他の科の先生には無いものだし、その中の僕らには何かできるはずだから、違うものに知的好奇心を使っていったら面白いと思う。そういうものに触れたいなっていう人がいたら、絶対に触れてほしい。「眼科医って一体何なんですか」って聞かれたら「見にきたら」って。これが眼科医だって。

吉田

眼科は面白いですよね。そしたら、若手がこれから眼科医になって、成長したいとか腕をあげたいって思ったら、どうしたらいいと思いますか。

米田

腕なぁ。スキルの意味でいうと腕の向上って分からんのよなぁ。

大澤

これねぇ。自然とできるようになる(笑)。

米田

その人それぞれの鍛錬というか、取り組み方、姿勢やから。誰かに教えてもらったとか、この教育システムに乗ったらできますよっていうものはまだ提供できてへんかな。

大澤

作りたいとは思うけど。米田が昔言ってて、むっちゃいいなと思ったのは、手術は教えるけど、そのステージに立つくらい頭の中でいろいろシミュレーションしてこいって言うのは絶対必要。「はい座りました。どうしたら良いですか?」って言うのは無いわ。

米田

しっかりシミュレーションしてきて手術に臨んで、そしてその場でできないことはあるだろうけど、それは助ける。

大澤

それぐらい人を切るってことはそれくらいすごいことだからね。

米田

いつも僕が言っている守破離とか日々自分を成長させようとしている人でないと残っていかないんじゃ無いかなって思う。「センス」とかじゃなく「取り組み」がちゃんとできているかっていうこと。

吉田

硝子体手術をしている者からしたら、お二人ぐらい腕をあげようと思ったら?

大澤

「思い」とか。

米田

あとは「経験」かな。

大澤

「経験」は共有してあげられるし。窮地に陥った時、そこから抜け出すのに大切なのは引き出しの数だけだと思うし。そこで動じないのは、やった事がある、経験した事があるって言う事だし。

米田

今までたくさん困った経験をして、いろんな窮地を乗り越えているって事。

吉田

そのほか、若い眼科医が成長していくために必要なことってありますか。

大澤

謙虚さ!

米田

僕も一番大事だと思う。

大澤

虚だと言うことは結局、人の意見を聞けると言うことだから。

米田

あとは患者さんに対して、こういう症状があると言われて、180度反対のベクトルでこうしたら治ると押し返すというよりは、では一緒に治す方向に歩きましょうかと、肩に手を添えていく感じが大事。

大澤

傾聴して、共感する。それなんよ。それ謙虚なことなんよ。自分の意見を言っちゃいがちやけど、なんで困ってるんやろって、その事を聞いて、それに手を添えてあげるだけ。

吉田

患者さんの求めていることをちゃんと感じて、それに同調して。

大澤

そう。同じ歩調でね。あと、米田がやっていて良いなと思ったのは、ベーシックリサーチはやったほうがいい。医者は科学者なんで、科学する心なしにいろんなことをするのは絶対良く無い。若い先生はベーシックリサーチをやって、その後臨床に着くっていうステージもあるし。

米田

その視点はあったほうが絶対良いでしょうね。例えば車で言っても、全くシートにしか座った事がないドライバーよりも、燃焼システムがこうなっていて、ブレーキはこうなってるとかってわかっていたほうが、どういう事が起こるか理解できるから運転は絶対うまくなる。

大澤

そうそう。サージャンとしてのスタンスで言うと、マシンを知ろうよって思う。僕も講演とかでめっちゃマシンのことについて話するでしょ。それは、そこ知らんとやっても絶対に上手くならんから。

吉田

理屈がわかっているからこそ、進歩の方法もわかりますしね。

大澤

あと、応用も効くでしょ。メーカーと話をするときも必要なトークだし。

米田

ベーシックリサーチっていうほど大したものじゃないけど、病態とか病理、薬理とかを考えていると、新しい考えが出てくるし、そうじゃなかったら、ずっとそのままであり続けてしまう。昔のオペと今のオペ違うけど、その方法要る?っていうのが出てくる。

吉田

最後、もし若手の先生が昴会に来られて研修を受けるとしたら、こういう風に受けたら良いというのがあれば教えてください。

大澤

それは確実にオープンマインドで臨む事。こうなりたいって決めるんじゃなく、そこで触れ合ったいろんな人たちに感化されるべき。この人も面白いしこの人も面白いって。

米田

それも謙虚さって事で、自分がこれって思ったことを信じ切ってしまうことは危ないし、オープンマインドで全てのことを吸収するって感じ。守破離もそうだし。守破離も一個のことを守るんじゃなくて、色々伝えられたものを一旦吸収して、受け入れてみましょうってことやから。撥ねつけずに。

吉田

なるべくいろんな先生に来てもらうのが良いですね。

米田

だから大澤先生に来てもらっているのは、オペのやり方が違うけど、結果求めているものは一緒やし。ストラテジーが違うやん。全く違うストラテジーで同じような結果が得られるのをみんなに見てもらいたいから一緒にさしてもらっている。それすごくデカいと思う。もし、僕と大澤先生が似たようなやり方やっていて似たような結果やったら、若い先生もそれが一番良いってそればっかりマネするから、そうじゃなくて違うやり方でもおんなじ結果やったら、僕と大澤先生両方のやり方ができるようになった上に、第三の違うやり方を若い先生が見つけてくれたら良い。こうしなさいっていうことは全然思っていない。

大澤

そう。そういう組織になるべきだと思う。結果求めていることは、患者さんの幸せやし、それを具現化する為のメソッドはいくらあっても良いし、道筋が多いほど対処法もいっぱい作れて、どんなことでも勝てるようになるやん。今すごく必要とされている組織と思うけどなぁ。

米田

僕と大澤先生のやり方を真似てみて、最終的にはミックスして自分のやり方を作ったら良いかなって感じ。

大澤

あとはリスペクトだよね。人をリスペクトできるって大事。

米田

そうですね。あとは真剣に取り組むこと。多少能力が劣っていても、真剣な人が最終的には勝つ。物事を達成するのは、能力ではなく、真剣さ。

大澤

僕が若かった時にそう思えたら良かったなって思うことは、どういう社会にしたいかっていうことなんよ。どういう社会にしていきたいかっていうことのために、どう道筋を立てて、今そのために何をすべきかっていう感じで見ていかないと。

米田

みんながハッピーに良い医療ができるような社会を目指して、その中での多様性があっても良いじゃないですか(笑)。

大澤

やり方もやりたいことも違って良いし(笑)

米田

手術がしたい人もいるし、外来がしたい人もいるし、毎日来る先生や週1だけとか月1だけ来る先生もいるし。1回見学に来て、そこで何かを持って帰ってもらうのでも良いし。いろんな人がいろんな関わり方をしたら良いから、常にオープンにしておきたい。この対談めっちゃおもしろい(笑)!

吉田

すごくおもしろいですね。いろんな先生、特に若手の先生にはぜひ見学とか来ていただきたいですね。お二人とも終始笑顔でしたね。すごく熱いトークをありがとうございました。

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